ひとりを起点に、新しいスポーツをつくろう –041 SPORTS-
041(2017.05.01)
誰かひとりの課題を、みんなで、全力で解決する---。そんなAll For Oneの精神から誕生した「O41 (All for One)プロジェクト」による、スポーツをテーマにした「O41 (All For One)SPORTS」のキックオフ・イベントが9月29日に都内で開催されました。このイベントのメインの目標は、ゲストのために、みんなで知恵を集めて新しいスポーツを開発してみようという実験。集結したみんなのアイデアは、どんな展開を見せたのでしょう?
「ひとりのために」の秘めたる可能性
新しいサービスや商品の開発と聞くと、マス・マーケティング的なイメージを思い浮かべる人が多いかもしれませんが、O41が目指すのは、「誰かひとり」に着目した、BtoBでも、BtoCでもない、Bto1型のアプローチです。その根本にあるのは「インクルーシブ・デザイン」という考え方。では、「ひとりのニーズに真に向き合うことには、とてつもなく大きな可能性が潜んでいる」というこのコンセプトの先には、どんな世界が広がるのでしょうか。
スポーツが「苦手」でも、スポーツを本気で楽しみたい
最近メディア等でも取り上げられて話題になっている「ゆるスポーツ」もBto1型アプローチで生まれた活動のひとつです。考案者の澤田智洋さんは「スポーツが絶望的に苦手な人でも楽しめるスポーツを」という、自身のモチベーションから、誰もがゆるく楽しめる「ゆるスポーツ」のアイデアを考えついたそうです。コンセプトは「スポーツ弱者を、世界からなくすこと」。2015年の発足以来、世界ゆるスポーツ協会(http://yurusports.com)から、すでに50種目以上の新スポーツが生まれています。
(ゆるスポーツについて語る澤田さん)
例えば、多発性硬化症という難病の患者さんの声から、彼らにも参加ができて、みんなで競技することでこの病気について知ってもらえるようにと考えられた「シーソー玉入れ」。シーソーのようにグラグラするカゴを使っているため、玉が入りすぎるとバランスが崩れて倒れてしまいます。倒れたカゴを元に戻す作業をしている間は、必然的に「休憩タイム」にもなるので、体に負荷がかかりすぎないようになっていることも、ポイント。
天井に向かって風船を投げて、投影された円の中心に近いところにあたると高得点と大きな花火の映像が得られるという「うち投げ花火」は、普段は外出することができない施設入居者や入院中の方のニーズから生まれました。花火を楽しめることに加え、腕の上げ下げ運動や首回りのストレッチにも効果があります。
ゲスト相談者のニーズをもとに、スポーツ開発に挑戦!
このように「誰か」のニーズに注目することで、果たして新しいスポーツをつくることはできるのか?ここからは、ふたりの障害を持つ相談者が登場して、参加者にそれぞれのスポーツへの想いや悩みを相談する時間です。
ひとり目のゲストは、寺田湧将さん。生まれつきの脳性麻痺の寺田さんは、「少しなら歩くことができる、車イス生活者」。海外で生活した経験から、日本のバラエティ番組にも「いじられる障害者」がいてもいいはずと思い立ち、吉本興業にはいり「車イス芸人」として芸能活動をスタート。現在はよしもとをやめ、得意のトークを活かし、ラジオMCやホストとして活躍しています。「障害を気にせず笑えるかっこいいタレントになりたい」と語る寺田さんの悩みは、運動神経が良く、スポーツ能力は高いのに、既存のスポーツでは、自分の能力を十分に活かしきれないこと。
(自身のヒストリーについて語る「相談者」のふたり)
ふたり目のゲストは、沼田尚志さん。野球少年でしたが中学三年の冬に原因不明の難病で倒れ、意識不明の重体に。右半身不随となりふさぎ込んで暮らしていた時、通信制の高校の先生から「もっとあきらめたほうがいいよ」という言葉を受け取ります。先生の言った「あきらめる」とは 「物事を明るみに出して、できることとできないことを瞬時に判断する」という「明らめる」という意味。この言葉をきっかけに立ち上がり、大手通信キャリアに就職します。そして、本業の傍、新規ビジネスに関わるイノベーターの祭典「しんびじ」を主宰し、会社員でありながら、「スーパーイノベーター」として知られる存在となっています。
プレゼンテーションの後には参加者からの質問タイムが設けられ「これなら健常者より得意なことは?」「障害があるからこそ特有な身体の使い方は?」など、相談者のニーズに迫る問いが繰り広げられました。そんな二人それぞれの相談者に共通するのは、スポーツが万能であったこと、そしてスポーツを通じて「モテたい」という気持ち。さて、そんな「個」の想いを起点に、どんなスポーツが生まれるのか……。
奇想天外?!「新スポーツ」の発表
相談者から得た情報をヒントに、それぞれの相談者に対して2つずつ、合計4チームに分かれて、ゲーム開発が始まりました。初対面の人たちが多い中、次第に議論は白熱。奇想天外なアイデアが展開されていきます。澤田さんによると、「名前(ネーミング)から入る」「見た目から入る」といったことも、スポーツ開発のポイントになるのだとか。
(チームに分かれ、アイデアを出し合う参加者の皆さん)
40分ほどのグループ作業を経て、いよいよ、開発された新スポーツが発表されました。
寺田さんへ提案されたのは:
・ 「ドキドキ」させることで心拍数を高め、それを動力にゲームを運ぶ「モテボール」
・ 甘い言葉を囁きながらプレイするというルールの「ホストボール」
沼田さんへ提案されたのは:
・ 俳句の5・7・5で言葉のキャッチボールをすることで競い合う「しゃベースボール」
・ ひとつの羽織を二人で着て、一人ずつ左右を担当することで競技する「ふたっきゅう」
実演を交えながらのユニークな発表に、会場はおおいに盛り上がりました。これらのアイデアは「世界ゆるスポーツ協会」により検討され、優秀な作品は公認スポーツとして開発が進められる可能性があるそうです。ここから生まれるスポーツそのものにも注目ですが、この「スポーツをつくるプロセスそのもの」が、まさにライブ感やチーム精神に溢れた「スポーツ的」な場となっていることも印象的でした。
(日本テレビの豊田順子アナウンサーと一般財団法人ジャパンギビングの佐藤大吾氏がこのイベントの司会を担当した。スペシャルゲストとして駆けつけたジャーナリストの堀潤さんからは「思った以上にゆるかった」というコメントも)
参加者からは「ゆるい運用だけれど、ベンチャー企業のミーティングのように和気あいあいと楽しくつくりあげていく雰囲気に一体感を感じました。みなさんの発想力がすごい(東京都パラリンピック組織委員会小川さん)」「障害のある方にテクノロジーでソリューション提供をする仕事をしていますが、普段の仕事では出会うことのない業界の方たちとも一緒に、みんなでひとつのことを話していくとてもいい体験でした(マイクロソフト大島さん)」といったコメントがありました。
また、相談者のお二人からは「僕の身体的なことに興味を持ってもらい、本当に真剣に考えてくれたことが印象的でした(沼田さん)」「どういうことができるか、など、具体的に聞いてもらえたので、答えやすかった(寺田さん)」という感想が。
提案されたスポーツ全てに「モテる」につながる要素が組み込まれていたため「俺たちこんなにモテたかったんだ……」と少し恥ずかしげに微笑む姿も。
みんなでつくるイノベーション、「Social WEnnovators」発足
O41は2016年に「社会起業家たちが、垣根を超え、メディア・クリエーティグ・ソーシャルの力を結集させながら社会課題と向き合っていこう」と発足したSocial WEnnovators(https://wennovators.com)の一企画として、今回のイベントを皮切りにスタートしました。今後は企業、行政、NPOなど多様なセクターのひとたちのゆるい連合体として広げてゆく予定だそうです。これからどんなプロジェクトが生まれていくのか。今後も注目したいと思います。
参考: Social WEnnovators https://wennovators.com
「ひとりのために」の秘めたる可能性
新しいサービスや商品の開発と聞くと、マス・マーケティング的なイメージを思い浮かべる人が多いかもしれませんが、O41が目指すのは、「誰かひとり」に着目した、BtoBでも、BtoCでもない、Bto1型のアプローチです。その根本にあるのは「インクルーシブ・デザイン」という考え方。では、「ひとりのニーズに真に向き合うことには、とてつもなく大きな可能性が潜んでいる」というこのコンセプトの先には、どんな世界が広がるのでしょうか。
スポーツが「苦手」でも、スポーツを本気で楽しみたい
最近メディア等でも取り上げられて話題になっている「ゆるスポーツ」もBto1型アプローチで生まれた活動のひとつです。考案者の澤田智洋さんは「スポーツが絶望的に苦手な人でも楽しめるスポーツを」という、自身のモチベーションから、誰もがゆるく楽しめる「ゆるスポーツ」のアイデアを考えついたそうです。コンセプトは「スポーツ弱者を、世界からなくすこと」。2015年の発足以来、世界ゆるスポーツ協会(http://yurusports.com)から、すでに50種目以上の新スポーツが生まれています。
(ゆるスポーツについて語る澤田さん)
例えば、多発性硬化症という難病の患者さんの声から、彼らにも参加ができて、みんなで競技することでこの病気について知ってもらえるようにと考えられた「シーソー玉入れ」。シーソーのようにグラグラするカゴを使っているため、玉が入りすぎるとバランスが崩れて倒れてしまいます。倒れたカゴを元に戻す作業をしている間は、必然的に「休憩タイム」にもなるので、体に負荷がかかりすぎないようになっていることも、ポイント。
天井に向かって風船を投げて、投影された円の中心に近いところにあたると高得点と大きな花火の映像が得られるという「うち投げ花火」は、普段は外出することができない施設入居者や入院中の方のニーズから生まれました。花火を楽しめることに加え、腕の上げ下げ運動や首回りのストレッチにも効果があります。
ゲスト相談者のニーズをもとに、スポーツ開発に挑戦!
このように「誰か」のニーズに注目することで、果たして新しいスポーツをつくることはできるのか?ここからは、ふたりの障害を持つ相談者が登場して、参加者にそれぞれのスポーツへの想いや悩みを相談する時間です。
ひとり目のゲストは、寺田湧将さん。生まれつきの脳性麻痺の寺田さんは、「少しなら歩くことができる、車イス生活者」。海外で生活した経験から、日本のバラエティ番組にも「いじられる障害者」がいてもいいはずと思い立ち、吉本興業にはいり「車イス芸人」として芸能活動をスタート。現在はよしもとをやめ、得意のトークを活かし、ラジオMCやホストとして活躍しています。「障害を気にせず笑えるかっこいいタレントになりたい」と語る寺田さんの悩みは、運動神経が良く、スポーツ能力は高いのに、既存のスポーツでは、自分の能力を十分に活かしきれないこと。
ふたり目のゲストは、沼田尚志さん。野球少年でしたが中学三年の冬に原因不明の難病で倒れ、意識不明の重体に。右半身不随となりふさぎ込んで暮らしていた時、通信制の高校の先生から「もっとあきらめたほうがいいよ」という言葉を受け取ります。先生の言った「あきらめる」とは 「物事を明るみに出して、できることとできないことを瞬時に判断する」という「明らめる」という意味。この言葉をきっかけに立ち上がり、大手通信キャリアに就職します。そして、本業の傍、新規ビジネスに関わるイノベーターの祭典「しんびじ」を主宰し、会社員でありながら、「スーパーイノベーター」として知られる存在となっています。
プレゼンテーションの後には参加者からの質問タイムが設けられ「これなら健常者より得意なことは?」「障害があるからこそ特有な身体の使い方は?」など、相談者のニーズに迫る問いが繰り広げられました。そんな二人それぞれの相談者に共通するのは、スポーツが万能であったこと、そしてスポーツを通じて「モテたい」という気持ち。さて、そんな「個」の想いを起点に、どんなスポーツが生まれるのか……。
奇想天外?!「新スポーツ」の発表
相談者から得た情報をヒントに、それぞれの相談者に対して2つずつ、合計4チームに分かれて、ゲーム開発が始まりました。初対面の人たちが多い中、次第に議論は白熱。奇想天外なアイデアが展開されていきます。澤田さんによると、「名前(ネーミング)から入る」「見た目から入る」といったことも、スポーツ開発のポイントになるのだとか。
40分ほどのグループ作業を経て、いよいよ、開発された新スポーツが発表されました。
寺田さんへ提案されたのは:
・ 「ドキドキ」させることで心拍数を高め、それを動力にゲームを運ぶ「モテボール」
・ 甘い言葉を囁きながらプレイするというルールの「ホストボール」
・ 俳句の5・7・5で言葉のキャッチボールをすることで競い合う「しゃベースボール」
・ ひとつの羽織を二人で着て、一人ずつ左右を担当することで競技する「ふたっきゅう」
(日本テレビの豊田順子アナウンサーと一般財団法人ジャパンギビングの佐藤大吾氏がこのイベントの司会を担当した。スペシャルゲストとして駆けつけたジャーナリストの堀潤さんからは「思った以上にゆるかった」というコメントも)
参加者からは「ゆるい運用だけれど、ベンチャー企業のミーティングのように和気あいあいと楽しくつくりあげていく雰囲気に一体感を感じました。みなさんの発想力がすごい(東京都パラリンピック組織委員会小川さん)」「障害のある方にテクノロジーでソリューション提供をする仕事をしていますが、普段の仕事では出会うことのない業界の方たちとも一緒に、みんなでひとつのことを話していくとてもいい体験でした(マイクロソフト大島さん)」といったコメントがありました。
提案されたスポーツ全てに「モテる」につながる要素が組み込まれていたため「俺たちこんなにモテたかったんだ……」と少し恥ずかしげに微笑む姿も。
みんなでつくるイノベーション、「Social WEnnovators」発足
O41は2016年に「社会起業家たちが、垣根を超え、メディア・クリエーティグ・ソーシャルの力を結集させながら社会課題と向き合っていこう」と発足したSocial WEnnovators(https://wennovators.com)の一企画として、今回のイベントを皮切りにスタートしました。今後は企業、行政、NPOなど多様なセクターのひとたちのゆるい連合体として広げてゆく予定だそうです。これからどんなプロジェクトが生まれていくのか。今後も注目したいと思います。
参考: Social WEnnovators https://wennovators.com